福北連携の理念
(歴史)
福岡、北九州の両市はこれまでの歴史においてアジア大陸に近いという地理的特性から東アジアの国々とそれぞれ文化的にあるいは経済的に密接にかかわってきた。
近年、福岡市は経済、行政、文化を核にしながら九州の中枢都市としての機能を集積させ、アジアの人、モノ、情報が交流する国際都市としてその地位を確保し、さらにその機能を高めながら国際情報文化交流拠点として飛躍しつつある。
また、北九州市は日本を代表する近代工業都市として、今日においても産業の集積を誇り、かつまた、この機能を背景に東アジアの交易の窓口として、また本州と九州の交通の結節点としての地位を築き、現在、国際的な産業・交流物流機能を高めつつある。
今日、両市は、九州の中枢都市としての立場から経済的にもまた広域交流の観点からも同一の都市圏として論じられ、あるいは、競合する関係として評せられてきた。
(深まりつつある両市のつながり)
両市は政令指定都市として60キロメートルあまりの距離に位置し、国土開発という観点からも同一国土軸に位置づけられ、近代日本の発展に寄与してきた。
近年、高速自動車道路を始めとして鉄道、新幹線、航空路などの交通網の整備はめざましく、新幹線を利用した場合、相互の隔たりは時間にしてわずか20分にも満たない距離に過ぎず、それは同一都市内の移動時間にまで短縮された。
さらに、都市機能においても、それぞれ個性を踏まえつつ、魅力ある都市づくりに専念した結果、双方の交流は通勤、通学、ショッピングなどこれまで以上に拡大し、一日あたりの交流人口は5万人を超えるまでになっている。
また、住宅地についても両市から周辺地域への滲出が進み、これによって両市を結ぶ回廊が形成されつつある。
今後、情報通信手段の高速化、高度化あるいは交通手段の充実が進むと思われるが、これは、両市の関係を一層緊密化し、交流の質と量を高め、実質的に同一都市圏としての形成を促進する要因になると考えられる。
(両市を取り巻く国内外の情勢)
こういった社会経済生活上のつながりの深化に加え、さらに、わが国はいま、国家運営の体制を規制緩和や地方分権という理念によって、大きく組み替えようとしている。このことを単純化して言えば、東京一極集中の終焉と、地方への権限の移行の始まりであり、さらには地方による国土発展の新たな可能性を模索する時代の始まりといえる。これは、地方都市の役割の相対的な高まりをもたらすとともに、都市間あるいは地域間の広域的な取り組みがこれまで以上に求められることになる。
国際経済環境の変化もめまぐるしい。その著しい変化は我が国の産業界や金融界を覆い、ここではすでに生き残りをかけた大企業同士の統合や業務提携、再編などこれまで想像だにできなかった状況を現出しつつある。
また、欧州諸国の経済的統合やアジア諸国の経済発展を目のあたりにするとき、最早従来の枠組みを越えて国際的視野からの都市経営を目指さなければならない時代が到来したことを示唆している。
(連携の意義)
このような状況を踏まえ、今後とも、都市を持続的に発展させ、充実した市民生活を確保するとともに、豊かな地域文化を育んでいくためには従来にない発想で都市を運営することが、今、我々に求められている。
両市の関係を俯瞰するとき、これまでいわれたような都市間の競争関係は、よりその範囲を狭めつつ、両市が今日迄培ってきた機能の相互補完による連携へと重心を移して行く道筋が見えてくる。このことは、相互に効率ある行政、小さな政府を目指すうえでも、当然のことであろう。
加えて、この方向は、国土開発の観点からみても、均衡ある発展を促すため地域の自立的発展の拠点としての役割が高まってくると考えられる。
とくに、両市は国土軸の結節点として、また我が国におけるアジアに最も近い政令指定都市として極めて重要な役割を担っており、アジアを意識した広域国際交流圏の形成が待たれている。また、連携軸に基づく交流により、新しい文化や価値の創出を図るとともに、国際交流機能や学術研究機能など、より高次の機能の集積を図ることにより、拠点都市としての役割を飛躍的に高めることができよう。
このことによって、我々は、東京を頂点とする都市間の階層構造からより水平的なネットワーク構造を構築でき、国土の均衡ある発展に資することができると考える。
また、連携を現実的に考える場合にも、実態的に進みつつある経済活動の緊密化を促進する民間レベルの連携から出発し、両市が地域ビジョンを共有しながら特定の行政分野の協調をする段階、さらには、協力可能な分野について共同処理方式を経ながら、より緊密な連携を指向する段階など、その目指すべきレベルも状況に応じた選択が可能であると考える。
(連携の目的と対象)
それを実現するためには、我々は、まず双方の個性を尊重し合い、都市運営の方向性を確認するとともに、その違いと同一性を確認し、それに向けて協調や機能の補完、役割分担や提携、さらには個別事業運営のノウハウの交換など様々な組み合わせで臨むことができると考える。
また、連携の可能性は、ふたつの視点からたどることができる。アジアを意識した国際交流という視点と市民生活向上という視点からである。
具体的にみていくと、両市は、東アジア諸国への西の玄関口に位置し、これらの国々との交流の歴史的蓄積があり、それを踏まえつつ、その高度な都市機能を相互補完的に運用することができれば、それぞれ個別の交流で培ってきた実績をはるかに上回る成果をあげることができる。それは文化交流から学術、研究交流など多くの分野での成果となって実を結ぶことだろう。
このことは経済活動や都市活動の幅を広げ、両市の国際交流インフラの役割を増大させるとともに、その機能の高度化をもたらすはずである。
一方、市民生活の向上という視点でみれば、少子高齢社会における福祉、医療、教育、また文化交流や防災など幅広い分野で培ったそれぞれの技術や経験は、互いに知的蓄積として交換が可能であり、それを生かすことによってそれぞれサービス水準の向上をもたらすことができるはずである。
市民生活に直結する環境問題さらには情報通信のインフラ整備についても共同の取り組みや整備が今後必要となるだろう。特に、これらの分野については可能な限り連携を深め、効率的運用によりコストダウンを図り、財政的負担を軽減していくことは、むしろ時代の要請でもあろう。
このように、両市にとって連携は、各々の国際的役割を高めるとともに、市民生活の充実にとって大きな可能性を秘めている。
(まとめ)
都市を巡る国際環境、国内事情は、両市にとって新たな課題を突きつけるとともに、その解決を迫っている。特に、両市の置かれた地理的歴史的状況を顧み、かつ望ましい未来を展望するとき、我々は、新たな関係を築くことが必要であり、しかも両市の個性ある都市機能を相互補完的に運用することが求められていると考える。
そうであるなら、周辺400万人ともいわれる規模の経済圏を背景に、その中枢機能の集積を今以上に高め、国内外の課題に応えるとともに、将来にわたって豊かな市民生活を確保するため、両市はともに交流から連携へさらには提携を進めることが発展の道筋ではないかと考える。これは予想以上の効果をもたらすだろうし、この方向に21世紀はあると、我々は確信する。
このことにより、東アジア諸国への窓口として国際的機能を高めつつ、生みだされる成果を、九州、西中国地域発展に広く環流していく可能性を高めることができるであろうし、さらに、今後、東京圏、関西圏、名古屋圏につぐ我が国第四の都市圏形成をも視野に入れて取り組むことも可能となる。
このため、将来に向けてともに一歩を踏み出すため、我々は、手を携え、ともに取り組むことが必要だと考える。
平成11年11月22日
福岡市長 山崎広太郎 北九州市長 末吉興一
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